これまでの記事では、
【基礎編】
・ラグビーの本質が「プレー選択」にあること
・「判断」という言葉を使うべきでない理由
【実践編】
・「選択」という言葉にチェンジすることで得られるメリット
・選手との対話やチーム力がどののように向上するのか
「選択」という言葉が、選手やチームにポジティブな変化をもたらすことはご理解いただけたでしょうか。
さて、シリーズ最終回となる今回は、その「選択」という言葉が、
コーチであるあなた自身にどのような変化をもたらし、コーチングを「もっと楽しく」してくれるのか
に焦点を当てていきます。
【この記事でわかること】
- コーチとしての役割が明確になり、指導への迷いがなくなること
- 感情に左右されず、落ち着いて選手と向き合えるようになること
- 選手が自立・自律・主体的に行動する「自走できるチーム」を育む喜びと、コーチ自身の達成感
- コーチングのプロセス自体が、より充実し、心から楽しいものへと変わる瞬間
「選択」がコーチにもたらす内面的な変化
コーチはどのレベル・カテゴリーであっても選手の人生に大きく影響を及ぼすことになります。
それだけ責任重大な役割です。
真面目で責任感が強い人ほど、
自身のコーチングに対して迷い、ストイックに自分自身を追いつめてしまうかもしれません。
「選択」を軸にしたコーチングは、
コーチングへの迷いを減らし、自信を与えてくれます。
また選手の成長を目の当たりにすることにより、大きな喜びを感じることができます。
必要以上のプレッシャーを感じることもなければ、苛立つこともありません。
コーチ自身が、喜びや自信を持ってコーチングに集中できます。

役割認識の深化と迷いの解消
コーチの役割は、「勝つために正解を教える」ことではありません。
そもそも複雑に状況が変化するラグビーにおいて「正解」を見つけることは、難しいです。(というかほとんどない)
「選択」を軸に据えることで、役割が明確になります。
コーチの役割とは、「選手が駆け引きを楽しめるように、プレー選択をサポートする」です。
役割を理解できれば、やるべきことが明確になり、迷いもなくなっていきます。
感情的にならない指導へのシフト
コーチの役割が明確になることで、
選手が「期待通り」に動かない時でも感情的になる必要がなくなります。
どのような状況になってもコーチが注目するべき点は、常に「選択」についてです。
「選択」するのは選手の役割です。
コーチは「選択」について、選手の考えを聞き、整理します。
いわば「ファシリテーター」としての役割です。
あくまで司会的な役割で場を回す役割なので、怒鳴る必要も、威圧的になる必要もありません。
これにより、コーチ自身のストレスも軽減され、ポジティブなコーチング環境になります。
「自走できるチーム」を育む喜びとコーチの達成感
選手が自分たちで「選択」をし、その結果から学ぶサイクルを回すことで、
選手たちが自立し、自律し、主体的に取り組む「自走できるチーム」に成長していきます。
チームトークの内容も充実し、自分たちの創意工夫で困難に立ち向かえるようになります。
コーチは選手に方向性を示し、もし選手が困っているなら全力でフォローします。
この「プレイヤーセンタード(選手が主体)」なコーチングスタイルは、
選手がグラウンドで生き生きとプレーする姿を間近で見られる、コーチにとっての喜びと達成感をもたらします。
チームが成熟し「自走できるチーム」にまで成長すると、
コーチが「何もしていないように見える」瞬間が訪れるかもしれません。
しかし、それこそが、選手が自らの力でラグビーを切り開いている証であり、コーチングの最大の成果なのです。
コーチングが「もっと楽しく」なる瞬間
「選択」を軸にしたコーチングは、コーチングそのものを「もっと楽しく」してくれます。
これは、単なる指導の効率化や成果向上に留まらない、
コーチ自身の喜びであり、面白さです。
プレーしている時には得られなかったもので、コーチだからこそ体感できるものだと思います!

選手の変化を間近で感じる喜び
「どのような言葉をかけ、アプローチをするか」
それにより、選手が大きく変化します。
「選択」は選手やチームをポジティブに変化させます。
「まずやってみる。もしダメだったら変えるだけ」というマインドセットになります。
より良い選択をするためのチャレンジや創意工夫を間近で見ることができます。
選手が自分で考えてプレーし、
以前はできなかった「選択」ができるようになる姿、
練習・試合中に選手同士で活発な「選択」に関する対話が生まれる瞬間を目にするたび、
素直に「すごいな…」と感じることができます。
選手の動きや、コミュニケーションが変化し、進化していく瞬間に立ち会えるのはコーチの特権です。
指導への確かな手応えと自信
「選択」を軸にした一貫したコーチングをしていくことで、
自分のコーチングが選手に確実に浸透していく手応えを感じられ、自信もついていきます。
コーチは選手に大きな影響を与える存在です。
その影響が、選手のより良い変化や、チームの活発で建設的な話し合いにあれば、
それは素晴らしいものだと思います。
選手に対し、
「どんどんチャレンジしていこう!」
と前向きに自信を持ってコーチングができます。
ラグビーの奥深さを再発見する楽しさ
ラグビーは本当に奥深いスポーツです。
プレーをすることと、コーチングをすることは全く違いますし、それぞれに面白さがあります。
コーチングはそんなラグビーの奥深さを体験する上では素晴らしい時間になります。
選手が、チャレンジや創意工夫を通して成長していく過程をそのまま目の当たりにします。
チームが困難に立ち向かい、勝負していく姿はとても面白いものです。
選手に無限の可能性やロマンを感じることができたら、それはさらに面白い瞬間になります。
学びは尽きず、もっと面白くできる!とよりクリエイティブに楽しめます。
まとめ
3回にわたるシリーズ記事、最後までお読みいただき、ありがとうございます!
このシリーズでは、「判断」から「選択」への言葉の切り替えが、ラグビーの現場にどれほどの変革をもたらすかを詳しく解説してきました。
- 【基礎編】では、ラグビーの本質が「プレー選択」にあることを明確にし、「判断」という言葉が持つ難しさについて掘り下げました。
- 【実践編】では、「選択」という言葉が、コーチの「問いかけ迷子問題」を解消し、選手間のコミュニケーションとチーム力を飛躍的に向上させる具体的なアプローチをご紹介しました。
- 今回の【コーチ成長編】では、「選択」を軸にしたコーチングが、コーチであるあなた自身の成長と、指導への深い喜び、そして確かな自信へと繋がることをお伝えしました。
コーチがやることは簡単です。
「判断」から「選択」へ言葉を変えるだけ。
何気ない変化ですが、コーチ・選手にとって大きな変化が起きるかもしれません。
その変化がより良いものとなり、コーチにはその瞬間を楽しんで欲しいと思います。
ぜひグラウンドで実践してみて欲しいと思います。
コーチングをもっと楽しんでいきましょう。