コーチって何?教師やインストラクターとの違いは?

「コーチとは何か」をきちんと理解できていますか?

このような問いかけに対して、迷わず答えられるでしょうか。

「練習メニューを考え、実施する」
間違ってはいませんが、それだけがコーチではありません。


「コーチングに既に関わっているけれど、コーチってそもそも何をする人なんだろう?
「これからを始めたいけれど、誰にも教えてもらえないし、何から手をつければいいのか分からない
「コーチとしてやるべきこと、やらないことを整理したい…」
「とりあえずコーチって何か教えて!」

そんな方々に向けて書きます。

この記事では↓について書いています。

  • 「コーチ」という言葉の語源
  • 教師やインストラクターとの違い
  • コーチの役割
  • コーチが「やるべきこと」「やらないこと」
  • コーチって何?

コーチを始めたての方には基礎知識として、
ベテランの方々には再確認のきっかけとして
今回の記事を読んで頂ければと思います。

Q:コーチって何?

A:コーチとは「目的地への到達(目標達成する)」のための「支援者」です。

単に練習で技術や知識を教える人ではありません。
教えすぎず、見守り、問いかけることでプレイヤーの「自ら考え、行動する力」を引き出す存在です。


「コーチングをもっと楽しく」
プレイヤーと共に成長していくためのヒントを見つけていきましょう。

目次

コーチの語源:目的地へ送り届ける「馬車」

コーチ(Coach)という言葉の語源は、ハンガリーのコチ(Kocs)という村で作られた「馬車」 に由来していると言われています。

馬車の役割は、「目的地へ送り届ける」 こと。
19世紀初期の英国で家庭教師を意味する言葉として使用されたのをはじめとして、徐々に「スポーツの指導者」を意味する言葉として転用されてきたそうです。

ちなみにドイツでは「トレーナー」とも言い、そのもととなる単語の「TRAIN」は列車を表す言葉です。

コーチというのは、語源からもわかる通り、
「目的地へ送り届けることを役割」
にしているのは、現在もおよそ変わらないようです。


教師・インストラクター・コーチ

「教える」という行為は共通していても、「コーチ」は「教師・インストラクター」とは明確な違いがあります。

ここのパートでは違いについて一緒に確認しましょう。

大事なことはその優劣ではなく、違いを理解し、役割を認識することです。

  1. 教師
    ・知識の伝達がメイン。
    ・最近は「学びの支援」へ変化している。
  2. インストラクター
    ・教える・指示する。
    ・特定のスキルや技術について教える。
  3. コーチ
    ・目標達成への支援がメイン。
    ・あくまで「教える」は手段としている。

教師(Teacher)

teachの語源は「tæcan」「知識を教える・示す」

教師は、主に知識の伝達規律の指導、そして社会性や人格の形成といった広範な教育を担います。
カリキュラムに基づき、多くの生徒に共通の知識やスキルを身につけさせることに重点が置かれます。

一般的なイメージだと
教師
↓知識の伝達
生徒
のような関係性です。

トップダウン的なコミュニケーションを取るのが特徴です。
小学校の教員免許を持っていますが、必須の知識を伝達するには最も効果的で効率の良い方法です。

ただし近年では、時代の変化に対応し、「生徒の主体的な学びを支援する」という役割へ変化しています。

インストラクター(Instructer)

instructの語源は「instructus」「教える・指示する」

インストラクターは、特定の技術やスキルの専門家として、その方法を正確に伝えることに特化しています。

私は、ヨガとピラティスのインストラクター資格を持っていますが、そこで行われるのは、

  • 「キューイング(指示)」
  • 「タクタイル(ポーズやフォームの修正)」

と呼ばれるものです。

インストラクターの役割として、「何を・どのように行うべきか」を具体的に教えます。

コーチ(Coach)

coachの語源は「Kocs(ハンガリーの村)」「馬車」


コーチは、教員やインストラクターが持つ「教える」要素も持ち合わせていますが、
その最も重要な役割は、対象が目標達成するための「支援」をすることです。

コーチの特徴として…

  • 知識や技術を教えるのは、あくまで手段のうちの一つです。
  • 「教えない」を選択することがあります。
  • 「コーチ⇔プレイヤー」という双方向的な関係性を理想としています。

違いが見えたでしょうか。
教師・インストラクター・コーチでは、それぞれ求められていることに大きな違いがあるのです。

コーチや教員、インストラクターのどれが最も優れているか、ということでは決してなく、
「それぞれの役割が違う→やるべきことが違う」ことを理解することが最も重要です。


コーチに求められる役割

現代のラグビーコーチには、多岐にわたる役割が求められます。
単に戦術の指示や練習の実施だけでなく、プレーヤーの成長を多角的に支援する存在となることが重要です。

まとめると↓

  1. 羅針盤
  2. 引き出し役
  3. 環境整備者
  4. モチベーター

それぞれ見ていきます。

「羅針盤」としての役割

  • 方向性・ビジョンの共有
    チームの方向性やビジョンをプレイヤーと共有し、チーム全員が同じ方向を向けるように導きます。
    方向性が明確になっていると、プレイヤーが自主的に動きやすくなります。
  • 目標設定の支援
    チーム目標だけでなく、プレイヤー個人の目標設定をサポートし、達成への道のりを共に描きます。

「現在地」と「目的地」を示すことで、道のりを示します。

「引き出し役」としての役割

  • 質問する力
    やみくもに答えを教え込むのではなく、プレイヤー自身が考え、気づきを得るための効果的な質問を投げかけます。
  • 観察力と分析力
    練習中や試合中のプレイヤーの動き、表情、発言などを細かく観察し、その背後にある課題や成長の兆しを見抜きます。

「答え」はプレイヤーの中にあります。どれだけ引き出せるかがコーチの力だと思います。

「環境整備者」としての役割

  • 練習環境の最適化
    プレイヤーが最大限のパフォーマンスを発揮できるよう、安全な練習環境を整えます。
    チームや個人の課題解決のための効果的な練習メニューを実施します。
  • 信頼関係の構築
    プレイヤー一人ひとりと真摯に向き合い、安心感を伴う信頼関係を築くことが重要です。
    挑戦を歓迎するチーム文化が、プレイヤーにとって最高の環境かもしれません。
    目には見えないけど、最も肌で感じられるもの…それが「信頼関係」です。

「安全第一」は全てにおいて最優先事項。物理的にも、心理的にも。

「モチベーター」としての役割

  • 肯定的なフィードバック
    プレイヤーの良い点や成長を具体的に伝え、自信とやる気を引き出します。
    強みをどれだけ伸ばせるか、はコーチにとってもやりがいがある部分です。
  • 課題解決の支援
    困難に直面した選手に対し、感情に寄り添いながら、解決策を共に探します。
    弱みはプレイヤーにとって最大のストレス。そしてコーチの腕の見せ所。

プレイヤーは誰もが活躍したい。それを実現できるようにするのがコーチ。


コーチが「やるべきこと」と「やらないこと」

コーチがその役割を最大限に果たすためには、「何をやるべきか」は大事です。(当たり前ですが…)
それと以上に「何をやらないか」はコーチにとって大事なことです。

コーチが「やるべきこと」

プレイヤーのために、コーチが「やるべきこと」をまとめると↓

  1. 傾聴
  2. 問いかけ
  3. フィードバック
  4. 環境整備
  5. 長期目線
  1. 傾聴すること
    プレイヤーの言葉に真摯に耳を傾け、彼らの考えや感情、悩みを深く理解しようと努めます。
    話を聞いてくれないコーチにプレイヤーは話してきません。
  2. 質の高い問いかけをすること
    「なぜそうなる?」「どうすれば良いと思う?」といった、オープンクエスチョンを投げかけ、自己解決能力を促します。
    質の高い質問には深い学びがあります。
    あくまでファシリテーター。
  3. 適切なタイミングでのフィードバック
    プレイヤーの行動や結果に対して、改善点だけでなく良い点も具体的に伝えます。
    次の行動につながるような建設的なフィードバックを行います。
    改善点ははっきりわかりやすく。良い点はより細かく。
  4. 成長のための環境を整えること
    安全安心が最優先事項。
    効果的な練習の提示。
    挑戦を歓迎するチーム文化。
    周囲からも応援され、愛されるチーム作りをコーチがサポートします。
  5. 長期的な視点を持つこと
    目の前の勝敗だけでなく、プレイヤーの人間的な成長やラグビーキャリア全体の視点を持って関わります。
    永くラグビーを愛する人を育て、波及させる。
    ラグビーは色々な楽しみ方があります。すべてがラグビー。

コーチが「やらないこと」

プレイヤーのためにコーチが「やらないこと」をまとめると↓

  1. 教えすぎ・指示しすぎ
  2. 感情的になる
  3. 過干渉
  4. プレイヤーの身体に触れる
  1. 教えすぎ・指示しすぎ
    プレイヤーが自分で考える機会を奪い、指示待ちになってしまう可能性があります。
    常に答えを与えるのではなく、ヒントを与え、挑戦させることを優先します。
    試合をするのはプレイヤーです。
    プレイヤーが自己解決できるように、普段から練習をするべきです。

  2. 感情的になる
    コーチの感情的な行動言動は、プレイヤーに不要なプレッシャーや恐怖心を与えます。
    心に大きな傷を負うことにもなります。
    上手くいかないのはコーチのせい。プレイヤーは練習通りプレーしてくれてます。

  3. 過干渉
    プレイヤーのプライベートに踏み込みすぎたり、グラウンド外のことまでコントロールしようとしたりすることは厳禁です。
    適切な距離感を保ち、信頼関係を築くことが重要です。
    あくまでコーチとプレイヤーの関係性です。思っている以上の力が働きます。

  4. プレイヤーの身体に触る
    見落としがちですが、ストレッチやマッサージ、指導の一環で身体に触れる時は、要注意です。
    はり師や柔道整復師は国家資格です。またトレーナーも身体の専門家です。
    専門知識や資格があって初めて他人の身体に触れています。
    コーチは身体の専門家ではありません。よって基本的にはNGです。
    どうしても触れる必要がある場合は必要最低限に。

まとめ:コーチって何?

Q:コーチって何?

A:コーチとは「目的地への到達(目標達成する)」のための「支援者」です。

単に練習で技術や知識を教える人ではありません。
教えすぎず、見守り、問いかけることでプレイヤーの「自ら考え、行動する力」を引き出す存在です。

  • コーチの語源は「馬車」にあり、人を目標達成へと導く伴走者としての役割を象徴していると言われています。
  • 教員やインストラクターが「何を教えるか」に重点を置くのに対し、コーチは「相手がどうすれば自発的にで目標達成できるか」 を支援する存在です。
  • コーチは、方向性・ビジョンの共有、問いかけ、環境整備、モチベーション向上など、多岐にわたる役割を担います。
  • 選手が自律的に成長できるよう、「傾聴」「問いかけ」「観察」 に注力し、「答えの与えすぎ」「指示のしすぎ」「過干渉」 は避けるべきです。
  • プレイヤーの身体に触る必要があるときは要注意。なるだけ最低限にしたいです。

コーチングは奥深く、いつまでも学びが尽きない領域です。
コーチは常に学びを続け、アップデートし続けなくてはなりません。
その結果、プレイヤーが成長し、輝く姿を見た時の喜びは、何物にも代えがたいものです。
「コーチングをもっと楽しく。Enjoy Coaching.」の精神で、一緒に取り組んでいきましょう。


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