コーチに必要なスキルは【言葉を正確に扱う】ことにある。
コーチの最大の武器である。
言葉一つで選手は変わる。
どのような選手になるかどうかは、コーチ次第であるのは間違いない。
今回はコーチが【言葉を正確に扱う】ということについて解説する。
大事なことは、
・言葉が最も重要なツールであると「自覚する」こと
・抽象的な言葉を避け、具体的な行動に落とし込むこと
・制度の低い言葉は、練習の質を落とす
・コーチの言葉が「チームの文化」になる
言葉を正確に扱い、コーチングを楽しんで欲しい。
コーチの最も重要なツールは「言葉」である【まずは自覚することから】
コーチが使うツールは様々ある。
笛やマーカー、ボールや最近なら映像ツールも含まれる。
その中でもコーチにとって最も重要なツールは言葉。
競技の知識や、戦術についてのアイデアもコーチングにとって重要であることは間違いないが、
それら全てを伝達する手段は、最終的には言葉である。
コーチとして発する言葉には、プライベートとは違い、選手に対して大きな力を持つ。
コーチから言われた何気ない言葉が選手を勇気づけることもあれば、競技を辞めてしまう…こともある。
コーチである以上、そのことを十分に自覚することが必要。
競技人生だけでなく、人生そのものを左右する。
コーチは選手に「道具を大事にしましょう」と言う。
コーチも同様に「道具を大事にしましょう」…すなわち「言葉を大事にしましょう」と言いたい。
他を例に出すなら、料理人。
一流であればあるほど、包丁の扱いは丁寧であるし、手入れも欠かさないはずだ。
コーチの最も重要なツールは言葉。
言葉が持つ力や、危険性を十分に自覚すること。
そして丁寧に扱い、手入れを欠かさないこと。
コーチの責務。
抽象的な言葉が選手を惑わす【意外と危険な言葉:「意識する」「溜める」】
言葉が重要なツールであることは多くのコーチが既に理解していると思う。
暴言や悪口などは全く問題外ではあるので、ここでは「意外と危険な言葉」について話す。
代表的な言葉を2つ紹介したい。
よく現場で聞く言葉達なので、もし無自覚に使用しているのであれば要注意。
(使ってはいけないってわけではないので)
もしかしたらその言葉が選手を惑わしているかもしれない。
振り返るきっかけにして見て欲しい。
意外と危険な言葉の共通点は、【抽象的で曖昧である】こと。
言葉を正確に扱う上で大事なのは、【具体的で正確である】こと、【言葉の本質を捉える】こと。
それを踏まえて見て欲しい。
意外と危険な言葉①:「意識しよう」【…つまり何をするの?】
「意識しよう」
この言葉を現場でどれだけ聞いてきたか…。
決して悪い言葉ではないけど、実は危険だと思っている。
ちなみに俺は普段、全く使わない。
なぜかというと、「具体的に何をするのか」が不明確だし曖昧であるから。
「意識しよう」という言葉は、そもそもどのような行動なのか。
説明するのは実は難しい。
それだけ曖昧な言葉を当たり前に使用していることを自覚してほしい。
「意識しよう」という曖昧な指示のせいで、選手は「つまり何をするの?」と思考停止になりかねない。
「意識したか?」とコーチが問いかけをしようもんなら、「はい/いいえ」のどちらかしか返って来なさそう。
俺の場合、問いかける時には、
「発見できた?」
「見つけられた?」
って聞くようにしている。
「意識する」ことの本質は、「発見」「自覚」だと理解している。
なお、「意識する」というテーマだけでも1記事書けるので、後日深堀りしたい。
ここでは、「意識しよう」という言葉が曖昧で危険だと知ってほしい。
意外と危険な言葉②:溜める【本質は、タイミングを待つこと】
「もっとラインを溜めて」
ラグビーの専門用語で、よく使われる言葉。
俺も使う言葉。
この言葉がなぜ意外と危険なのか。
それは、「具体的な行動を正確に示していない」から。
「溜める」とは、実際に何をするのかを正確に示す必要がある。
「溜める」とは、「待つ」こと。
「待つ」とは、「スタートのタイミングを待つこと」
このように正確に表現した方が、コーチの指導指示としては的確である。
「溜めた?」とは聞かず、「いつまで待つの?(When)」と問いかけができる。
なお、俺が指導する際には、「トリガー」という言葉を使って共通認識がしやすいように指導している。
こちらについても別記事にて解説する。
ここでは、「溜める」が実は曖昧な言葉である、とういうことを知ってほしい。
「良い練習」=正確に言葉で表現できる練習【練習の質の担保】
良い練習とはどのような練習か。
これには色々と議論の余地があるし、どれもきっと正しい。例えば、楽しい、試合で発揮される、とか…。
今回は「言葉を正確に扱う」というテーマで考えてみる。
良い練習とは、
「誰の、何時の、何の練習なのか、を正確に言葉で表現できる練習」である。
ここまで正確に言葉で表現できれば、練習としてはかなり優秀だといえる。
逆に悪い練習とは、これの逆。
「溜めを意識した練習」程度の言葉でしか表現できない練習をしようもんなら、最悪と言える。
言葉を正確に使うことは、フィードバックの面においても「練習の質」を担保する。
例えば、練習や試合で「できた/できなかった」という評価や問いかけをする際にも、正確な言葉で表現する必要がある。
- 「やろうと思ってできなかったのか?」
- 「そもそもやる場面がなかったのか?」
- 「その場面に気づくことすらできなかったのか?」
この3つは、それぞれ全く意味が違うし、練習でやることも違う。
「できた/できなかった」に関して、その範囲やレベルを正確に言葉で捉えなければ、ズレた練習を続けることになる。
選手のために、そのミスはできるだけ避けなくてはいけない。
逆に、正確に言葉で捉えることができると、
チームや選手にとって、必要な練習をクリティカルヒットさせることができる。
コーチの腕の魅せ所だし、最も慎重になる場面でもある。
コーチの言葉は「チーム文化」に直結する
コーチの使う言葉が「チーム文化」に直結する。
というか、コーチが普段使う言葉をそっくりそのまま選手が使う。これは間違いない。
どれだけ「選手中心で主体的なチーム」であっても、チームトークで話される言葉は、普段のコーチ自身の言葉である。
コーチが抽象的で曖昧な指示をすると、試合中に選手が行うチームトークでも曖昧な言葉が使われ、
結局、行動の改善に至らない話し合いが起きる。
結果的に何も修正(プレーの変更、改善)できないまま、試合が進むことになる。
言葉を正確に扱うということは、プレーについて正確に分析ができるということ。
正確な分析は、的確な改善の可能性が高める。
選手自身がやるべきことについて、明確になり、プレーに反映される。
普段から、言葉を正確に扱い、行動をしていくことがチームの当たり前になる。
こうやってチーム文化が築き上げられる。というか積み上がる。
選手が主体的にやっているように見えるが、実はそれはコーチがデザインすることである。
まとめ:コーチがやること【まずは自覚することから】
「言葉を正確に扱う」というテーマについて解説した。
コーチにとって、最も重要なツールである言葉を、正確に、丁寧に扱う。
そして手入れを欠かさず、常に最高の状態で臨むこと。
普段、当たり前に発している言葉について、「自覚すること」からスタートしてみて欲しい。
練習の映像をみたり、選手の使う言葉を聞いてみてる。
また、誰かに練習を見てもらう、というのも良い方法だと思う。
正直、恥ずかしいし、あまり気乗りしない作業ではある。
ただ、コーチとして選手の前に立つ以上、これは責任でもある。
言葉を磨く。
最高の道具で最高の仕事をする。
これはどの職業も変わらないのかもしれない…。
以上

