「意識しよう」は危険?!→曖昧な言葉がコーチも選手も迷わす

前回の記事では、意外と危険な言葉として挙げた。
「意識しよう」
コーチも選手もみんなが使う言葉。

言葉を正確に扱うことが必要な中、コーチはこの言葉が示すものを正確に捉えているだろうか。
…おそらく殆どのコーチがそれを無自覚に使用しているだろう。

俺自身はこの「意識しよう」という言葉は全く使わない。
なぜかというと、曖昧で使いづらいから。

今回は、「意識しよう」という言葉について解説する。
この言葉はどのような意味を指すのか。
選手にとってどのような影響を生むのか。そして、どのような点で危険なのか。
結局コーチはどうすべきなのか。

コーチは言葉を正確に扱う必要がある。
一度この言葉の意味を立ち止まって考えてみて欲しい。
俺なりの解決策=言い換えについても紹介する。

目次

「意識しよう」という便利な言葉

ラグビーのコーチだけでなく、スポーツのあらゆる場面で
「意識しよう」
という言葉が飛び交っている。
トップ選手のインタビューでも本当によく出てくる。

でも冒頭にあったように俺はプロコーチとして、この言葉はあえて使わない。

それはなぜか?

「意識」という言葉は一見とても便利ではある。
なんだかそれっぽいし、とりあえず言っとけば間違いない。
ただ、ここに落とし穴があるので気を付けて欲しい。

「意識しよう」はコーチが考えているよりも抽象的な言葉だ。
つまり選手にとって重要なことである「具体的な行動」を指していない
コーチはそのことを自覚できているかどうか。

「意識しよう」という謎の指示【結局何してほしいの?】

「意識しよう」という言葉の最も危険な点は、
「結局何をすればいいかはわからない」ことにある。

例えば、「余ったら外でトライを取り切る意識をしよう」という指示。
良く聞く言葉ではある。
それっぽい指示であるし、選手も「よし、意識しないと!」となるかもしれない。
選手のモチベーションが上がったり、気持ちが引き締まる…かもしれない。

では、この「意識しよう」とは「具体的に何の指示」なのだろうか
つまり、「いつ」「どの場面」「誰の」「何のプレー」を、「どのようにすべき」なのか。
選手は一体、何を努力したら良いのか。
コーチは選手の何に注目するのか。
これが不明確になってしまう。

・トライを取り切った場合は、意識したからできたのか。
・トライが取れなかった場合は、意識が足りないからできなかったのか。
それでは、「取り切る意識」には何が必要なのか。
どのようなプレーが必要で、どのような練習をするべきなのか。

もし、選手から「どのようにすればトライが取り切れますか?」と聞かれたら、
「取り切る意識が必要」という非生産的な答えを返すことになるのだろうか。

「意識」という言葉で一括で表現するには範囲が広すぎる。

お互いの共通認識が持たれないという点でも、「意識しよう」という言葉の難しさがある。

「意識したか?」という不毛な問いかけ【詰問への入り口】

練習中や試合中にミスをした選手に対して「意識したか?」と問いかける場面を想像してほしい。

「意識したか?」
これがなぜ危険な言葉なのか…。

そもそも問いかけはクローズド・クエスチョンになる。
クローズド・クエスチョンとは「はい」or「いいえ」で答えられる質問。

「問いかける」ということはきっと、選手の思考を確認したり、考える力をつけて欲しいというコーチの意図がある…はず。
ただ、この「問いかけ」には、「はい/いいえ」どちらにせよ、なぜミスが起き、どうするべきなのかという分析や思考が生まれる可能性は低い。
よって、プレーが改善される可能性も低い。

この手の「問いかけ」は、どちらも同じ末路をたどることになる。
非生産的で不毛なやり取りになってしまう。

1. 「はい」の場合

当たり前だが、誰だって怒られるのは面倒。
特にコーチと選手の関係性だと、怒られたくない心情は痛いほど理解できる。

よって、「意識していました」と問答を終わらせる行動を取る。
それで「問いかけ」が終わってくれたら良いが、
「意識してたのに何でできないんだ」
と追撃されるのであれば、選手はもう黙るしかない。
選手が何を言っても「言い訳」をしたとコーチに取られてしまうからだ。

2.「いいえ」の場合

仮に「いいえ」だった場合、
「なんで意識しなかったのか」
という質問が続くと予想される。

「はい」の時と同じ。

「Why」なので、一見、オープン・クエスチョンと勘違いしてしまうが、これはそもそもが「問いかけ」にすらなっていない。

答えるのが難しく、選手を追い詰めるだけの不毛なやり取りになってしまう。

「意識」→「発見・自覚・選択」に分解する【言い換え】

では、「意識しよう」の代わりに何と言えばいいのか。
そのためには「意識しよう」という言葉の本質を捉える必要がある。
本質を捉えるとは、具体的な行動で示すこと。

「意識」それはズバリ、
「発見」→「自覚」→「選択する」というアクションのプロセス。
この3つのアクションに分解して考えていいる。
「やろうとしてやっているのかどうか」という点が重要となる。

「意識」という言葉を使わず、「発見」と「自覚」に置き換えて欲しい。
これらの言葉を用いることによって選手に対するアプローチが大きく変わる。
たくさんの情報を選手から引き出し、共通認識を取ることができる。

例えば、先と同じ「余ったら外でトライを取り切る意識をしよう」を置き換えてみる。

① 「発見できた?」で共通認識を確認【スキル発揮する場面】

「意識しよう」ではなく、「発見できた?」と問いかけからスタートして欲しい。
これだけでもコーチングは劇的に変わる。

そもそも「余った」という数的優位な場面を「発見」できないことには、トライを取り切るプレーに至らない。
3対2などは数的優位な場面での攻撃の練習としてはポピュラー。
普段からその練習をしているなら、それを発揮する場面。

練習通りのプレーをする場面が来たことが「発見」できなければ、練習通りのプレーは起きない。

「発見」できているなら、成功も失敗も練習で経験しているはずなので、振り返りや修正もしやすい。

もし、「発見」ができていないのであれば、それはコーチングが可能な場面となる。
「今のがその場面だったんだけど、どのような状況だった?」
「その場面を一番早く発見できるのは誰?」
「その人はどのタイミングで発見した?」
など、オープンクエスチョンでの「問いかけ」を繋げることができる。

もしかしたら選手からコーチに「今の場面だった!」と「発見」を教えてくれるようになっていくかもしれない。
それがコーチと選手が共通認識を持つ瞬間にもなる。
成功も失敗も、惜しい場面も、選手とともに分かち合えるようになる。

しかも、コーチとしては、「発見」できるようになること自体が大きな成長として選手へポジティブなアプローチができる。
「発見できたけど、できなかった」なら、たくさん練習したら良い。
「次はできるよ!」と楽しい声掛けもできる。

② 「自覚」して「選択」できたか

スキルを発揮する場面だと「発見」できた。
ただ、「発見」できただけでは、発揮はできない。

発見後に、スキルを発揮しようと「自覚」し、そのプレーを「選択」したかどうか。
これも重要なキーポイントとなる。

問いかけとしては…
「あの場面で、どれをやりにいったの?(練習でやったどのプレーを選択しようとしたの?)」
と聞くことが多い。他にも…
「やろうと思って、できた?」
「やりたかったけど、できなかった?」
「やろうって思えなった?」
「そもそも、やるかどうかっていう発想すら起きなかった?」
などと聞いたりする。

この会話は実はコーチにとって非常に重要となる。
コーチが選手のプレーに対する感覚について共通認識を取ろうというアクションだから。
選手からの解答によって、コーチングのアプローチが変化する(練習内容が変化する)重要なポイントになる。。

まとめ:「共通認識」の重要性

コーチの役割は、
カオスなグラウンドの中で選手がパニックにならず、自分自身でプレー選択ができるようにすること。
そのためには、「共通認識を持つこと」が必要となる

コーチは選手のスキルがどの段階・レベルにいるのかを正確に知りたい。
それによって、やるべき練習、取るべきアプローチが大きく変わる。
選手にとって必要な練習をクリティカルヒットさせるためにも。

選手には「正確に言語化をしてもらう」必要がある。
コーチができるだけ言葉を正確に扱って、指示やコーチングをしなければならない。
「意識しよう」という一見便利だけど、曖昧で難しい言葉を投げ続けるのは、選手だけでなく、コーチ自身も迷わせることになる。

「言葉を正確に扱う」
これはコーチの責任。
選手の成長を助ける最大の武器。

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