「前を見て判断しろ!」
ラグビーをはじめ、スポーツの現場で毎日のように飛び交う言葉です。「判断」という言葉は選手にとってもコーチにとっても使いやすく、重要な要素であることも間違いありません。
しかし、私は指導の際に「判断」という言葉を使いません。
なぜなら、グラウンドで実際に起きているのは「判断」ではなく、プレーの「選択」だからです。
コーチの言葉を「判断」から「選択」へ変える。この小さな切り替えだけで、指導は劇的にシンプルになります。選手にとっても、コーチにとっても「わかりやすい指導」ができるようになります。
この記事では以下について解説します。
- ラグビーを「カードゲーム」として捉える考え方
- 「判断」と「選択」の違いと、言葉を変えるべき理由
- 「選択」という言葉が対話と修正をどう変えるか
なぜ「判断」という言葉を使わないのか

「判断しろ!」と言われても、選手は「じゃあ、結局何をするの?」と迷ってしまいます。「判断」という言葉は便利な反面、具体的な行動が見えづらいのです。
一方、グラウンドで実際に起きていることを正確に言い表すなら、それは「プレーの選択」です。「パスを選ぶ」「キャリーを選ぶ」「キックを選ぶ」——選手は常に選択をしています。
ラグビーの本質は「プレー選択」にあります。この認識がコーチングの言葉を変える出発点になります。
ラグビーを「カードゲーム」のように考える

私はよく、選手たちに「ラグビーはカードゲームのようなもの」と伝えています。
選手の手元には、「パス」「ラン」「キック」といったプレーのカード(選択肢)が握られています。選手は一瞬で状況を読み解き、「いまはパスのカードを切ろう」「ここはキャリーだ」と、最適な手札を選んで場に出します。
カードゲームのように考えると、選手とコーチの役割も明確になります。
- プレー選択をするのは「選手」——カードを選ぶのは選手の役割であり、楽しみ
- プレー選択を支援するのが「コーチ」——選手の手札を増やし、強くし、出し方を練習する場をつくる
主役はあくまで選手です。コーチの役割は、選手が持っている「選択肢(カード)」を豊かにするためのサポートです。
わかりやすい「問いかけ」が「対話」を生む

「選択」をベースにすると、問いかけが具体的になります。
「あの場面、他にどんな選択肢(カード)があった?」と問いかければ、「パスと、裏へのキックがありました」と、選手自身が状況やプレーを言語化する手助けになります。
| 曖昧な問いかけ | 「選択」ベースの問いかけ |
|---|---|
| 「判断できてた?」 | 「他にどんな選択肢があった?」 |
| 「もっと考えて」 | 「次はどれを選択したい?」 |
| 「しっかり見て」 | 「どのタイミングで選択する?」 |
わかりやすい「問いかけ」が「対話」を生んでいきます。
選手達自身での「修正」を可能にする

試合中にミスが起きたとき、「修正して」と言われても、選手は結局何をどうすればいいかわかりません。
しかし「選択」という言葉を使えば、修正のイメージが明確になります。「今のカード(引きつけるパス)は相手のプレッシャーに負けたから、次は別のカード(先に放すパス)に選択を変えよう」というように、やるべき行動が具体的になります。
試合中は短い時間での修正が求められます。「選択」という言葉を使うことで、コーチを介さずとも選手たち自身で修正できるようになります。
まとめ:全員が「わかりやすく」なる
- ラグビーの本質は「プレー選択」にある|「判断」ではなく「選択」という言葉がグラウンドの実態を正確に表します
- 「カードゲーム」のように考える|選手はカードを選ぶ人、コーチはカードを豊かにするサポーターです
- わかりやすい「問いかけ」が「対話」を生む|「どんな選択肢があった?」という問いが言語化と対話を後押しします
- 選手達自身での「修正」を可能にする|「選択を変えよう」という発想が、試合中の自己修正を可能にします
ぜひグラウンドで「判断」という抽象的な言葉を、「選択」という具体的な言葉に変えてみてください。
選手にとって、ラグビーは複雑性が高く感じられるものですが、カードゲームのように考えることでシンプルに理解できます。コーチにとっても、「わかりやすい指導」が可能になります。

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