指導者のための質問のコツ ― 「なぜ」より使いたい問いかけ

スポーツ指導者のための質問術「なぜ」より使いたい問いかけ Why→What/Howへ

以前、こちらの記事で「なぜ」ではなく「なに」を選手に問いかけると、指導が伝わりやすくなるかもしれない、とお伝えしました。

「なぜそうした?」ではなく「なにを選んだ?」。
この言い換えは、選手が答えやすくなる工夫の一つだと感じています。

ただ、ここで一つ疑問が残ります。
この「なぜ」という言葉には、選手を身構えさせてしまう理由があるように思います。

今回は、この「なぜ」の裏側にあるかもしれないメカニズムを、自分なりに考えてみたいと思います。
これからも心がけていきたいことのメモのようなものだと思っていただければ幸いです。

目次

「なぜ」が身構えさせる理由 ― 感情→欲求→理性のプロセス

私たちコーチは、つい「正しいことを、正しく伝えれば、選手は動く」と考えてしまいがちです。
しかし実際の指導現場を振り返ると、正論やアドバイスをどれだけ重ねても、選手がなかなか動いてくれない(動けない)場面のほうが多いように感じます。

※参考:谷原誠『「いい質問」が人を動かす』(文響社、2016年)では、
人はまず感情が動き、そこから欲求が生まれ、最後に理性がその行動を正当化する
という順番が紹介されています。

この順番を踏まえると、「なぜ」が持つ危うさが見えてきます。
「なぜ」には「正解はこちらだ」という前提が滲みやすく、選手には問いというより詰問のように響いてしまうことがあります。

感情が先に動く…という前提においては、「責められている」という感情のほうが先に立ってしまうと、本来引き出したかった「自分で考えて動く」状態からは、遠ざかってしまうのかもしれません。

「なぜ」を使うとき、自分の中に何があるか

指導の現場で「なぜ」と口にするとき、自分自身、独特の緊張感が走る感覚があります。
正解を当てなければいけないような、どこか怒られているような雰囲気になることもある気がします。

思い返してみると、怒っているコーチのイメージというのは、大抵は「なんでやらないの?」という言葉に集約される気がします。

「なんで○○しないんだ(答えはこっちなのに、それでもそっちを選ぶあなたは…)」
という、呆れや苛立ちやコーチ自身の感情が、自分でも気づかないうちに質問の中に入り込んでしまっていることがあるのかもしれません。
感情をぶつけるだけでは、コーチングとは言えません。

選手の側に立って想像してみても、「なぜ」を投げかけられた瞬間に生まれるのは、「考えよう」という前向きな姿勢というより、「これ以上責められないように、正解らしきものを探そう」という防御反応のほうかもしれません。

萎縮したり、言い訳を探したり、本音を語りにくくなったり――
「なぜ」という一言が、そうした流れのきっかけになってしまうこともあるのではないかと感じています。

「なぜ」から「なに」「どうすれば」への言い換え、心がけていきたいこと

逆に、「なぜ」を使わずに問いかけてみると、自分自身も少し冷静でいられる感覚があります。
それは、質問する側の中に「正解を握っている」という前提が入り込みにくくなるからなのかもしれません。

あくまで自分の実感なので、すべての場面に当てはまるとは限りませんが。

以前の記事「判断から選択へ」では、「なぜそうした?」を「なにを選んだ?」に言い換える例を紹介しました。
今回考えてきたメカニズムを踏まえると、この言い換えがなぜ効きそうなのか、少し具体的に見えてきた気がします。

「なぜ」が持ちやすい「正解を握った側からの詰問」というニュアンスが、
「なに」「どうすれば」という問いには含まれにくいのではないか、ということです。

Whyベースの問いかけWhat/Howベースの問いかけ
なぜパスを選んだ?なにを見てパスを選んだ?
なぜそこに気づかなかった?次はどうすれば気づけそう?
なぜ同じミスを繰り返すんだ?どうすれば同じ状況で違う選択ができそう?

Whyベースの問いは、過去の判断そのものを裁くニュアンスを帯びやすいのに対し、
What/Howベースの問いは、次の行動に視線を向けやすいように思います。

選手にとっても「責められている」ではなく「一緒に考えている」「意見を聞いてくれる」という感覚に、少しでも近づけたら良いなと思っています。

まとめ

質問は、選手に正解を「答えさせるため」のものではないのだろうと思います。

選手の中にある感情や欲求に働きかけ、
選手自身が「動きたい」「こうしたい」「こうしてみよう」
と思える状態に少しでも近づけるためのものなのかもしれません。

「なぜ」という一言が持つ危うさに、自分自身、まだ気づけていない場面もきっとあると思います。
それでも、次に「なぜ」が口をついて出そうになったとき、一度「なにを」「どうすれば」に置き換えられないか、心がけていきたいと思っています。

Kindle Unlimitedを無料で試してみる

今回参考にした『「いい質問」が人を動かす』は、Kindle Unlimitedの読み放題対象になっていました。
気になった方は、無料体験期間中に読んでみるのもおすすめです。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
目次